思わず彼に駆け寄り、座り込んで、その小さな身体を抱きしめていた。
「…ミツ、ミツ。」
「う、え?へ?」
意味が分からないのか戸惑っている彼からは、甘い匂いがした。なんだか、とても懐かしい気持ちになった。
「ほら。ミツが困っていますよ。」
咎めるような刀夜さんの声に、ゆっくりと身体を離しても握った腕は離さなかった。
私の唯一の家族。
血の繋がった弟。
どうしてこんなに大切な存在を忘れていたのかと思うと、悲しくて堪らなくなった。
「う、わあ。お姉ちゃん、凄く綺麗だね。」
頬を赤らめて笑うミツ。
ふと、彼にはどこまでの記憶があるのか疑問に思ったけれど、今はそんなのどうでも良かった。
「私の名前は、レイ。」
「レイお姉ちゃん?」
「ううん。レイでいい。」
頭を撫でながらそう言うと、ミツは笑って頷いた。
その笑顔は、私にはとても眩しかった。