「何故逃げるんだ、レイ。」
「私に触るな。」
「そんな事を言うんじゃない。」
こんな事実を聞いて冷静でいられる訳がない。だって、そんな。
「…死んでやる。」
私のせいで両親もゼンも死んだなんて、あまりにも堪えられない。
今だってこんなにも胸が張り裂けそうだ。
「良いのか、弟は。」
その科白に、後退っていた足がぴたりと止まった。
「お前の弟は生きているのにな。」
「…卑怯者。」
「なんとでも言えば良い。」
こうなる事は初めから予想していたのか、ボスは冷たく言い放って葉巻を口にくわえた。
「お前は、私から逃げられるわけがないんだ。」
きっと、ずっと。
私の人生は、この男の手の内にあった。
そう考えたら、やり切れない思いが溢れ出した。