「怖いよな?」

その言葉に首を横に振った。
だって今、凄く辛そうな顔をしているから。

「俺は、俺が怖いよ。」

悲しそうなその声に、彼の近くまで行くと、思わずその手をきゅっと握っていた。

「怖くない。ゼンはちっとも怖くない。」

驚いたように目を見開いた彼は、その瞳を潤ませた。
それはもういつもの優しい色を帯びていて、ありがとう。と小さく囁くそれは私の好きなあったかい声だった。




「お楽しみ中申し訳ないんだけど。」

突然聞こえてきた声に、先程までの怒りやら悲しみやらが再び沸き起こってきて、身体が小さく震えた。
それに気付いたゼンが驚いたようにこちらを見たことにも気付かないふりをして、そうしたら彼は何も言わずに繋いでいる手を優しく握り返してくれた。

「あんたがこの組織のボス?」

「ああ。」

「私の両親が何故殺されたのか知りたいんだけど。」


単刀直入にそう聞いてから、少し身構える。
男が懐に手を入れたからだ。しかし、そこから取り出したものはただのロケット式のペンダントだった。