息を切らしながら走るその先に何があるのかは分からなかったけれど、何も考えずに進んだ。

いつの間にか男は血まみれで倒れていた。どうゆら私がやってしまったらしい。

だって、さっきの言葉がとてもじゃないけど許せなくて。
だって、可哀相だなんて。

そんなのまるで、私がJudgeに裏切られたみたいじゃないか。





ばんっと開けた扉の向こうには驚くべき光景が広がっていた。
呻き声と血の臭いに思わず動きを止める。
倒れて地面に伏せた人間が何人もいるなか、ただ一人その中心に立っている人物がいた。

「ゼン。」

呼んだ途端にぴくりと反応した彼は、ゆっくりと振り向き、こちらを見た。
そんなゼンの口元には妖しい笑みが含まれていて、身体にべったりとついている血が余計に恐ろしさを増させていた。

「あーあ。レイに見られちゃったね。」

残念そうに肩を落としてみせるも、声はとても楽しそうに弾んでいる。

しかし、ようやく分かった。
これが、彼がJudgeのナンバーである理由なんだ。

「俺さ、二重人格なんだ。向こうに殺意向けられたら殺したくて堪らない。楽しくて仕方がない。」



これが、彼の狂気だ。