わたしはこの島を愛している。

本土からは遠く離れた小さな島。
人の温かさに溢れた離島。
優しい潮風が吹き抜けるこの場所。


周りの海は、旅行会社のパンフレットに載っているものよりはるかにうつくしい。
あんなものはただのインクの色だ。
この海を見れば、あおという色の本当の価値がわかるだろう。




この場所はわたしにとって、特別な場所でありすぎる。

生まれた場所。
育った場所。
少女時代の世界の全て。

そして。

その狭い狭い世界を、いとも簡単に壊してしまった、彼と出会った場所。

同時に、彼を失った場所。





だからわたしはここで死にたいと思っている。

島の外の暮らしに思いを馳せたこともあった。
だけどそのあこがれは、もし本当にわたしが島の外に出てしまったら、ただの落胆とか失望とか、そういうモノに変わってしまうのだろうと、簡単に想像がつく。

わたしの場所はこの島だ。

あこがれはあこがれのままでいい。
うつくしい場所にわたしは行かない。
うつくしいものは離れて愛でていればいい。


出会ってしまったが最後。


平凡なわたしは、鮮やかなその魅力に、溺れることしかできないのだから。