「ここ、立ち入り禁止な筈やけど…まあいいか。私も黙って入っちゃったしな」


少し訛りのある言葉もまた…すごくいいと思った。


「そっか。舞台の台本…練習してたんやね。ええなあ。私妖精って好きやねん」


その時の先生の笑顔は、とても可愛かった。最初はのり気じゃなかった。


でも、なぜか…
この日を境に真剣に演技の練習をするようになった。


『私妖精って好きやねん』


その言葉をずっと思い出しながら―――…


「妖精って…実際いたらどんな感じなんだろう?」


きっと、桜井先生みたいに綺麗なんだろうな。
少しはにかみながら台本を読んだ。

それが凄く幸せだった。


それが“恋”だと気付くのは、まだ先の事だった。



でも、どうしても許せなかったのは女装だった。
ティンカーベル…ヒラヒラの綺麗な服を見せられた時は目眩がした。


「光太くん絶対似合うのにー!」


女子はそう言っていた。
でも、男が着るもんじゃないだろう。


―――今なら平気だけど。
とりあえず、衣装を着るのは本番だけ。


『本番はちゃんとやるから』


そうやって逃げていた。
でも本当に、本番はちゃんとするんだ。


桜井先生に、見てもらう為に―――…