そして三ヶ月という月日が経ち、引越しの日を向かえた。
無事、のり姉のいる高校へ入学出来て、ひと安心。


地元の駅で、両親が切符を買っていると、兄貴が思い出した様に言う。


「おい、今頃長谷川落ち込んでんぞ」


兄貴は大きな荷物を持ち、肩が右側に下がっている。


「うっさいなあ。後でメールしとくよ」


私は荷物を兄貴の左に掛け、バランスの取れた兄貴。


「美希!!」


駅の改札口を通ると、駅の入り口には長谷川がいた。


「美希!!俺はお前の事が好きや―――――――!!」


………え?


私は突然の事で、目を見開くだけだった。
周りからヒソヒソと、笑い声が聞こえる。


…恥ずかしい。


恥ずかしいので他人の振りをして電車に乗り込む。
乗った車両から、長谷川の姿が見えていた。


「俺のもとへ戻ってきてくれ!!」


…いや、戻ってきてくれも何も、あんたのもとに居たことないから。


姿だけでなく、声を充分届いていた。
ドアの近くに立ち、長谷川の様子を見る。


「東京なんかに行かんといてくれ!!」


「いや、それは無理やろ。」


私がそう言うと、電車のドアがプシューと音を立てて閉まった。