「『無理』って言える程、アンタは頑張ったわけ?好きなら好きって言って、振られて、スッキリしてきいや!!」


ここは舞台、それは分かっていた…筈なのに。


なんだかやるせなくて、ムカついて、イライラして…爆発してしまった。


妖精は頬を押さえて、こちらをただ見ていた。
会場がザワつく。


私はその時、正気に戻った。


「ごめ…っ」


「そうだよね。僕は、好きだ。…誰よりも」


妖精は口を開いた。


「…漫才が。」


妖精はニコッと笑った。


…アドリブ。
舞台の袖でナオが拍手をしている。


「いやー!良かったよー!二人共、アドリブがっ」


ナオがニコニコと笑ってこちらに近付いてきた。
いつもクールなナオが汗をかいている。


「…ほんと、良かったよ。ミッキー。」


妖精が頬を押さえてそう言った。


「ご…っ、ごめん。叩いて…」


「いいよ、おかげで気合はいったから」


「え?」


「…僕、告白して、フラれる事にする。そして、諦めるから。」


妖精は真っ直ぐな目でそう言った。私は何故か、顔が熱くなった。


「ところでさー、ミッキー。“振られてこい”ってなに?しかもそこだけ関西弁だったし。」


クラスメイトがそう言う。


「そ…それは、間違えちゃって…関西弁になったのは、熱はいりすぎて素になってしまったというか…」


もごもごして話していると、後ろで妖精は笑っていた。
いつもの笑顔…よりも、いい笑顔をしている。