「うわ…高…」


どうして、こうゆう所の自販機のジュースってこんな高いんだろう。


「ミッキー!」


…げ。


「何をしているんだい?」


「え、見たら分かるやん。ジュース買ってんねん」


私は少し尖がった言い方をした。


「何をそんな苛ついているんだい?にばしを食べなよ。」


私はため息をついて、妖精を見た。


「アンタは知ってたん?染五郎さんと…のり姉が付き合ってんの」


もしかして、知ってて…『協力する』なんて言ってたんかな。


「………。」


妖精は目を逸らした。
やっぱり、知ってたんか。


「あのさ、ヒカル……」


そこまで言って、私の言葉は詰まった。



妖精が、辛そうな顔をしてたから。


『好きになってはいけない人なんているのかな』


―――この台詞は、好きになってはいけない人を、好きになってしまったから言ったのだとしたら…


もしかしたら…


「アンタ、もしかして…のり姉が好きなん?」


私がそう言うと、妖精は顔を真っ赤にさせた。


………図星だ。


「好きになったらアカンって…兄貴の彼女やから?」


妖精は、微かに頷く。


イルカショーが始まり、自販機の場所からでも少しだけ見えていた。


二匹のイルカがキスをして、ハートマークを作っていた。
二匹のイルカを、私と妖精は静かに見ていた。