ドタドタドタッ!!


玄関から、やたら早歩きな足音が聞こえる。多分、長谷川だ。


「お邪魔していいですかっ!?」


やたらと息を大きく出して喋る、こいつが長谷川だ。


「いや、もうお邪魔してるやん」


私が箸で長谷川の方を指すと、長谷川は少しうろたえる。


「で、どないしてん、こんな朝早くから」


兄貴は焼き鮭にマヨネーズをかけつつ聞いた。
長谷川は何故か焦りながら答えた。


「ななななななななな…何で言ってくれへんかったん?」


長谷川がそう喋るだけで、何故か不快な感じがした。
何故かというと、ヤツの口は臭い。


「長谷川、口臭いからもうちょっと離れて喋って」


私は長谷川のお腹を押して、少し離させた。


「あっ、ごめん!急いで来たから歯―磨いてきてないねん」


長谷川は口を隠して照れる。


「で?なんやって?」


兄貴が長谷川にもう一度用件を聞くと、長谷川は『あっ、そうや!』という顔をして、また近付いてきた。


「ななななななななな…何で言ってくれへんかったん?」


長谷川はさっきの言葉をリピートした。


「何を?」


「転校する事!」


長谷川のその台詞を聞いて『ああ』、と顔を見合わせる私と兄貴。