「僕が、桜井先生の事が好きだから…兄貴が遠慮して言ったことなんだ」


のり姉は、目をパチクリさせていた。


しばらく沈黙が続いたが、のり姉がこう言った。


「………ごめんね。」


分かっていた結果だろうと、やっぱり辛いよね──…


でも、妖精は緊張の糸がほどけた様に静かにため息をついた。


「謝らないで…ください。気持ちを伝えたかっただけですから」


「うん、でもね…私、知ってたよ……ごめんね。気付かないふり、してただけなんだ。」


のり姉は、妖精の気持ちを知っていた。


“知っていた”というより、直感的なものだったらしいから、確信はしていなかったみたい。


「でも、私は光太くんの気持ちに答えられないから、美希とくっついてくれたら私の事忘れてくれるかなって思ってた。…………ごめんね。」


のり姉は顔を下げた。
妖精はずっと真剣な顔つきで、話を聞いていた。


「ううん、…ありがとう。」


妖精はそう言った。
辛いだろうけど、精一杯笑ってる。