朝を迎えた。
窓のカーテンを開けると
熱い日差しが差し込んだ。
高速の看板を見ると
矢印の横に"東京"という
文字を見つけた。
本当に東京へ来たのだ。
そう思うと同時に
腹に激痛が走った。
母さんに食べる?と言って
渡されたおにぎりも
あまりの痛さで
食べることが出来なかった。

窓の外に目をやると、
目の前に大きなレンガ調の
建物が見えた。
東京駅だ。
翼との待ち合わせ場所である。
腹痛はおさまらず、
一瞬このままバスに乗って
帰ろうかと思った。
「着いたよ」と一言
メールを打った。
翼から返事はなかった。
東京駅は広すぎて
田舎者の私には
何がなんだかわからなかった。
とにかく歩き回ったが、
翼らしき人は見つからなかった。

東京駅に着いて約30分、
母さんが向こうの方を見て
私に言った。
「あの子じゃない?」
坊主、白のTシャツ、
そしてジーパン。
どこにでもいそうだが
間違いなく翼だった。
向こうは気付いておらず、
私は翼に近づいていった。

翼は大きな柱に
もたれて待っていた。
私が顔をのぞき込むと
ハッと気付いた。
「翼…やんね?」
「ちか…?」