「いや、お嬢ちゃんだから譲るんだよ。」

「いえっ、悪いですって。」

「くれるって言ってるんだからもらいなよ。せっかくの人の好意を無にしないの。」

「でも……。」

「ん~、ならこれ着ててどこで買ったのか聞かれたらうちのこと言ってくれよ。うちの宣伝。これがお代。ならいいだろう?」

「…そこまで言ってくださるなら…。ありがとうございます。大事にします。」

「いや、この着物も売れ残ってるよりあんたみたいな子に着てもらった方がいいに決まってる。宣伝になるしね。」

「はい。本当にありがとうございます。」

「よかったね。ねぇ、葵ちゃん。それ、着せてもらったら?」

「あぁ、そうですね。どんなもんか見せてくださいな。さ、こちらへ。」

「じゃあその間に僕勘定済ませて待ってるね。」

「なら、うちはほかの物包んどきますさかい、奥にいるのにに手伝ってもろてください。お~い、ちょっと出てきとくれ。」

奥から色香を漂わせたきれいな女の人が出てきた。

「へぇ。なんでしょ?」

「ちょっとこのお嬢ちゃんの着替え手伝ってくれ。」

「分かりました。あら、なんて可愛らしい。さ、こちらへどうぞ?」