戻ってきたおじさんはいくつかの着物を抱えていた。

「こんなんどうです?」

そう言って見せてくれたのは、桃色の着物と薄藍色の着物だった。

「綺麗な色ですね、これ。カワイイです。」

着物の色合いが綺麗で気に入った。

「そうだろ、お嬢ちゃん。あと、袴はこれでいいかい?」

と、藍色の着物と灰色の袴を見せた。

「はい。大きさも大丈夫です。」

「これで、全部かな?じゃあ、お代を……「ちょいと待ってくれ。」

そう言っておじさんが葵の肩に着物をかけた。

「あぁ、やっぱりよく似合う。」

その着物は、白地に赤い大輪の花が咲き誇っているものでとても美しかった。

詳しくない葵でも高価ないい物だと分かった。

沖田はそれを見て驚いていた。

「おじさん。こんな高価なもの買えませんよ。」

「いや、これはあげるよ。お代はいらない。あと、髪飾りも附けてあげる。」

「なんでですか?こんな良いもの…。」

おじさんは笑顔でいった。

「いやね、この着物仕入れたはいいんだが…、綺麗すぎて売れなくてね。」

「綺麗すぎて売れない?」

「あぁ、曰く、これじゃあ自分が引き立て役になっていやなんだと。言われて納得したよ。」