「店長。パン屋さんになろうと思ったきっかけ聞いてもいいですか?」


進路の参考になるかと思って、バイトが始まる前に店長に聞いてみた。


店長の焼くパンは美味しいと評判で、常連さんもかなりいる。



「小さい頃からパン屋さんになろうって、思ってたわけじゃない。夢がなくて行き着いた先だよ」


こんなに美味しいパンを作ってるのに、最初からなろうって思ったわけじゃないんだ。


「将来の参考になりました。それじゃあ表に出ますね」


エプロンの紐を引っ張られて言われたありがたい言葉。


「将来なんか焦って決めても意味ないからな?夢は作るものじゃなくて、出来るものだよ」



店長に言われた言葉が深く残る。いつもふざけたことしか言わないと思ってたのに。