「えぇ?茶髪でイケメン?そんな人、うちの学校にいないって」


わたしが強引に誘って部活帰りの百華と、今日はご飯を一緒に食べる。


百華はハンバーグ、わたしは大好きなスパゲティー。

バイトのシフトが入ってない日は、たいがいこうして好きなことしてる。


百華も部活で疲れてるはずなのに、いつも誘いに乗ってくれる。


「でもでも、その人百華と同じステッカー貼ってたもん」


スパゲティーをフォークに巻ながら、反論。メロンパン王子は、絶対百華と同じ高校なはず。



「うちの学校、校則厳しいの知ってるでしょ?茶髪なんて論外だよ」



別に好きなわけでもないのに、メロンパン王子のこと聞いてるわたしって?


わざわざ百華呼び出して、この話題って?


しばらく沈黙になったあといつもみたいに、百華の愚痴大会になった。


部活を頑張ってる百華も、あと少しで引退なんだと思うと受験が迫ってきた気がして嫌になる。



大学も決まってないわたしたち二人は、受験生に乗り遅れてる気がする。だけど、焦ることもなくこうやって笑って過ごすんだ。



「やっぱりルイが1番だね。愚痴るのも、本音言えるのもルイが1番だよ」



恋愛話は全く話題に上らないわたしたちは、恋の履歴書どころじゃないのは確実。


さんざん笑って、気付いたときには周りに誰もいなくてドリンクバーでお腹もいっぱい。



やわらかい風が、今度はわたしたち二人を触っていく。家に着く頃にメロンパン王子を思い出した。



「ルイ、そのメロンパン王子好きなの?」


唐突に聞かれた百華の質問に、戸惑うわたしがそこにいた。