「マサトさんは、わたしじゃなくて亜海に買ってあげてください」


あなたが笑顔を作らないなら、わたしが笑顔を作る。あなたがいつもするみたいに、ニコッとして。


「彼女がいる僕に挑戦するような笑顔は、作らないで欲しいな」


そう言ったマサトさんは、微笑むこともなければまた歩き始めた。


公園に着くと無言のままベンチに座った。この前はあんなにワクワクしたのに。


「ルイちゃんって、本当に変わってる。僕の与えるモノに価値を感じないんだ」


「そういう意味じゃないですよ。ただマサトさんは、わたしの知り合いである前に友達の彼氏です」



マサトさんから甘い言葉をかけられて、たくさんの女の人は喜んだのかもしれない。

もちろんこんなイケメンにそんなこと言われて、嫌なわけがない。でもわたしは、マサトさんより龍に言われたい。



「ルイちゃんに好きになられた人って、どんな人なんだろ?ルイちゃんにとって、カッコイイ彼氏なんて要らないの?」


メロンパンを食べながら、呟いた小さな声。マサトさんは、いつも笑顔でニコニコしてて。



「ルイちゃんも聞いたよね?僕は見せ物。“カッコイイ彼氏”としか紹介されない」



フォローしようとしてるのに、言葉が出てこない。“そんなことない”って、一言すら言えなかった。