メロンパン二つをプレゼントされた王子は、めちゃくちゃ喜んでた。
バイトがないと分かった以上、マサトさんもわたしが何も用事がないことを知ってる。
「ルイちゃんって、好きな場所ある?そこでメロンパン一緒に食べようよ」
子供みたいな人。パンが入ってる紙袋を、大事そうに抱えてる。
「図書館の近くの公園」
好きな場所になってた。ただの公園じゃない。龍と輝と騒いだ場所。
あの公園ならここからも近いし、そんなに歩かなくて済む。こんなイケメンさんを連れて歩いてたら、悪目立ちしそうだから近場がいい。
「ルイちゃんって、イメージ通り。公園とか図書館とか、静かなとこ好きなんだね」
「どの公園でも良いってわけじゃないんです。あの公園は特別」
「どうして?」
歩くのを止めて、真剣な目がわたしを見る。パンが入ってる紙袋に力が入ってるのか、紙袋が潰れる音がする。
「この前友達と行って、すごく楽しかったんです。ミルクティーを買ってもらって、いまだに嬉しくて」
「ミルクティーなら僕だって買ってあげる」
真剣な目で、いつもの笑顔じゃない。マサトさんならこういうとき必ずニコッとして、王子様みたいに言うくせに。