「亜海は会いたいって言ってくれたよ?だから放課後ほぼ毎日あそこに通ってたし」


マサトさんって、天然なの?そういう意味で言ったわけじゃないし、王子様過ぎる。

うちのより新しく出来たパン屋さんのメロンパンが美味しいって、言ったんじゃないの?



バイト休みなのに、バイト先に来るっておかしい。しかも今日は架織先輩のシフトが入ってた。


お店に入ると、甘い香り。この時間は、焼きたてのクロワッサンが売られてるはず。


「えっ、ルイ?えっ?」


パンを並べてた先輩が、ビックリしてる。今日は驚く要素がたくさんある。


「ルイ、今日バイトないでしょ?それより、メロンパン王子と同伴ってどういうこと?」



「その...なんていうかね、うん」


デートでもないし、偶然会ったわけでもない。亜海がここにいなきゃ、おかしく見えてるんだろうな。


「ルイちゃんがバイトだっていうから、送りに来たんです」


そう言いつつ、トレイにメロンパンを二つ乗せてる王子。先輩にニコッと笑顔を作りながら。


「デートコースにバイト先って、変わってるね。そして、王子。ルイは今日バイトないです」


また余計なことを。先輩はわたしを見ながらニヤニヤしてる。


レジの後ろ側からも店長がこっちを見て、ニヤニヤ顔。みんなしてわたしをからかってる。