「亜海のこと、置いてきて良かったんですか?」
わたしが店を出て、マサトさんが追いかけてきた。これじゃあ、亜海は一人ぼっち。
「亜海から帰ったよ。“親友を悲しませたかも”とか言いながら」
わたしにわざと言ったと思ってたのに、実際はそのつもりがなかったってこと?
「ルイちゃんが嘘ついてるのから、僕も嘘ついちゃった」
前から知ってた友達の彼氏を、あたかも初めて会ったみたいな演技をしたのは事実。
でも、あんなに二人が似合ってたのは意外だった。行かなきゃ分からなかったのに。
「ルイちゃんは変わってるよ。本当に面白い子」
わたしのことをいつもそう言うマサトさんこそ、変わってる。わたしは面白くないし、変わってない。
だんだん人混みも無くなって、さっきまで周りにたくさんいた人もいなくなってきた。
「久しぶりにルイちゃんのとこのメロンパン食べたいな」
ぐいっと肩を持っていかれて、小さな路地に入る。一気に人の数が減る。
路地をたくさん曲がると、わたしのバイト先が見えた。こんな近道があったんだ。
「駅前のパン屋さんより美味しくないのに、食べたくなるんですか?」
思いっきり嫌味を言っちゃった気がする。しばらく来なかった過去は、変えられないでしょ?
「ルイちゃんが“会いたい”って言わなかったから」