メロンパン王子を見ると、不安がってるのが分かるのか目線を反らされた。
嫌われたんだ、わたし。店長さんが一生懸命作ったメロンパンも、マサトさんから嫌われた。
目線も反らされて、“俺を見るな”って言ってる。
「俺、そんなこと言った覚えないけどな、亜海?」
メロンパン王子がいつもの笑顔なのに、目つきが怖い気がする。
弁解しようとしてるの?わたしの不安が無くなる一方で、亜海が不機嫌になっていく。
「わたし帰るよ。バイトあったの思い出した。今日はありがとう」
伝票を引っこ抜いて、席から立ち上がる。
不機嫌な亜海と一緒にいたくないし、メロンパン王子が弁解するのも見たくない。
わたしのために弁解しようとしてくれるのは嬉しいけど、亜海とマサトさんの関係が悪くなったら意味がない。
「ルイ?ねぇ、ルイってば」
亜海の呼び止める声を聞こえてないフリして、勘定を済ませる。抜け出すまであと少し。
嫌なことがあると逃げ出したくなる。すぐ逃げ出すのは、わたしの悪いとこ。
メロンパン王子。
あなたはやっぱり王子様で、遠い存在でいてください。
食べ慣れたものより、新しいものが好きで、人情なんて必要ないんだ。
美味しいのは、わたしたちのメロンパンじゃないんでしょ?