本当は行きたくなかった。だって、演技をしなきゃならないから。
亜海の彼氏の紹介なんて、本音を言えばされたくない。でも、亜海は自慢したいんだよね、わたしに。
雨が上がったばかりで、水たまりがたくさん出来てる。
スカートの裾に、泥水がつかないように気を付けながら歩く道は一人だと退屈だった。
待ち合わせ場所までは、あともう少し。
この坂を登れば見えてくる、あの信号を右に曲がればすぐのカフェ。
なんの迷いもなく、私の横を猛スピードで走ってくる車に、腹を立てながらも坂を登った。
バイトも今日は入ってないし、ゆっくり家でゴロゴロするつもりだったのに。
学校もない休日なのに、まさか友達の彼氏と一緒に過ごすなんて。
しかも、メロンパン王子を紹介されるんだ。見たくない。亜海とメロンパン王子がいちゃつくとこなんか。
カフェに着くと、手を挙げて亜海がわたしを手招きする。亜海の向かえ側にメロンパン王子が座ってる。
正式に言えばメロンパン王子じゃなくて、マサトさん。