それから勉強そっちのけで、ノートを通して会話していた。
自然と笑ってて、龍くんも笑ってる。この心地好い時間を壊したのは、誰かのバイブレーション。
「ごめん、ちょっと抜ける」
マナーモードにしてたのは龍くんらしく、慌てて携帯を持って外に出ていった。
置き去りにされたわたし。ついさっきまで、笑顔でいれたのに。
なんでわたしはこんなに寂しがってるの?ただ電話をしに行っただけなのに。
「その後ろ姿はルイちゃんでしょ?」
静かな図書館で、調子がいいのはきっとこの人くらいだ。振り向かなくても分かる。
「輝くんでしょ?」
「あたり」
期待を裏切らない答え。お調子者の輝くんは、インパクトが強すぎて覚えてる。
「龍が言ってたのって、嘘じゃないんだ。今日ルイちゃんと会うって言ってたからさ」
さりげなくわたしの隣に座り込む。輝くんも勉強始めるつもりらしい。
「龍くん、電話しに行ったから今いないよ」
ただ頷くだけの輝くん。わたしよりも英文法の参考書が大切なのね。
「龍はああみえて寂しいやつなんだ。表も裏もあって掴めないやつだけど、嫌うなよ?」
参考書を読んでたと思うと、意味深な発言。そう簡単に嫌いにはならない。
「うん」
言葉の意味も分からずに、分かったふりをした。
きっと輝くんのことだし、そんな深い意味もないと思うけど。