恋の履歴書。
受験生の肩書きで、書けないと思ってた。でも、書き始めようとしてる。わたしの“恋の履歴書”
「百華ちゃんが言ってたあの男の子かぁ。文武両道な学校だし、さぞかし頭脳明晰なんだろうね」
パンを乗せてたトレイを回収して、裏の厨房に運ぶ。今日はずっと話してたせいか、時間が過ぎるのが早い。
今日の帰り道は、先輩も駅まで一緒。わたしの恋の話を聞きたいらしい。そんなに話すほど進展してないのに。
「でもさルイ。恋もいいけど受験生なんだからね?」
先輩の人差し指がわたしのほっぺに当たる。そう言いながら、受験生に恋愛を推奨するのは先輩なのに。
「架織先輩に“受験生だから”なんて言われたくないです」
「なにをぉ」
笑いながら膨れていく先輩の顔。わたしがあのパン屋さんで働かなかったら、出会ってなかった。
架織先輩が、先輩で良かった。そう思えるのは、先輩が仲良くしてくれるから。
笑ってたら、あっという間に駅まで歩いてた。駅前には夏に向けて派手な人ばっかり。
「あれだよね?新しく出来たパン屋さん」
先輩の目線に目を向けてみると、人だかりが出来てるお店。
わたし達のお店では、平日にあそこまでお客さんがいたことはない。