ライブ終了後、すぐライブハウスから抜けた。亜海と李沙には、ここでは会いたくない。
まだライブの熱気が覚めないうちに、足早に歩いていく。
そういえばメロンパン王子って、マサトって言うんだ。しかもバンドで一番人気だなんて。
いつもメロンパンを買いに来る雰囲気と、バンドのギタリストと雰囲気が全然違う。
「ルイちゃん??」
後ろから走ってくる音がする。前に立って、深く被った帽子を脱いだ人はメロンパン王子。
「ルイちゃんだったよね?今日はありがとう」
「今日は楽しかったです。チケットありがとうございました」
いつもの笑顔で、さっきとは違うメロンパン王子。チケットくれたときみたいに、ニコッと笑う。
「ルイちゃんいたから、めちゃくちゃ頑張っちゃった、俺。褒めて??」
子犬みたいに、褒められて頭を撫でられるのを待ってるみたい。
「それもファンサービスだったり?」
そう言って、メロンパン王子の頭が上がるのみ待つ。だけどなかなか顔が見えない。
「ルイちゃんって、本当面白い子」
メロンパン王子はわたしの手を取って、自分の頭に持っていく。
「こうやってくれれば良かったのに」
ぽんぽんとわたしの手を自分の頭にやって、メロンパン王子は微笑んでる。
こんなふうにされるなんて初めてだし、どうしたらいいのか分からない。ただ驚くわたし。
わたし、顔赤くなってる気がする。見ないで欲しくて、顔を下に向ける。
「照れてるルイちゃんもかわいい」
覗き込むメロンパン王子の顔が、とても無邪気。
街灯の明かりが、かっこいい顔を照らし出す。そうやって心を奪うんだ、メロンパン王子は。