「また助けてくれてありがとう」
夕暮れ。バイトの時間も忘れて、龍くんと二人で隠れたまま。
初めて会って、初めて話したのに初めてに感じない。
龍くんといろんな話をした。この学校のこと、輝くんのこと、百華のこと。
二人で笑って、龍くんのカバンに入ってるお菓子を食べて、過ぎていく時間。
いつのまにか薄暗くなってて、裏の門から学校を抜けた。
「今日はありがとう。楽しかった」
「また遊びに来てよ。今度は堂々と文化祭にでも」
携帯を開くと不在着信の数に驚いた。全部バイト先からの着信。
「ルイちゃんの連絡先、教えてもらってもいい?」
首を縦に振る。断る理由なんてない。
「メール待ってます」
その一言を言って走り出す。どうしようか。
楽しい時間の代わりに待っているのは、店長と架織先輩からの質問攻めに違いない。
「気をつけてね」
その言葉に後ろを振り返ると、龍くんが手を振ってくれてた。
龍くんは優しい人。
だから人気者なんだよね?みんなに優しいの?
1時間遅れてバイトに行くと、怒られるよりも先にニヤけた先輩が待ってた。