スタジオに入る。
応接室にメイク道具が運ばれ
臨時の控え室になっていた。
カウンターテーブルに鏡が立てられ
アタシはパイプ椅子に座り
ドライヤーをあてられている。
カメラ機材や照明のセッティングに
忙しいケイちゃんは
スタジオに入ってから
まだ、ここへは来ていない。
メイクさんは
ファンデーションを丁寧に塗り
ビューラーで
クルンと跳ね上がったまつ毛に
マスカラを軽く付けただけだった。
ただ、髪は
気が遠くなるなるほど丁寧に
ブローしていた。
『綺麗な髪ねぇ…
こんなに長いのに毛先も傷んでないわぁ』
そう言いながら
ミスト状のスタイリング剤を吹きかけ
また、念入りにブローを繰り返した。
『はい、出来上がり…
左右に頭を振ってみて』
アタシの髪は、
まるでシャンプーのCMのように
サラサラと揺れた。