瞬くんは立ち止まってアタシを見つめた。

その目には同情の色が浮かぶ。


言葉とは裏腹に
アタシの言った意味を
納得し理解している。



平気だったなずなのに涙が出て来た。


ここで泣いたら…

アタシがママに慕情の想いを
持っていると思われそうで…

唇を噛み必死で堪えた。



アタシはママに愛情を求めた事は無いし
あてにだってしていない。

これから先だって

冷めた親子の関係が
変わらない事ぐらいわかっている。


なのに、
なんで涙が出るんだろう…くやしい。





その時…
瞬くんはアタシの頭に片手をのせて
そのまま自分の胸に引き寄せた。


アタシのおデコが瞬くんの胸にあたる。



『オレが…いるだろ』


添えた手は優しくアタシの頭を撫でた。

瞬くんの体温が伝わってくる
寂しさに軋んだ心が緩くほぐれてゆく…


我慢していた涙が
あとから、あとから溢れ出す…

アタシは目を閉じて
ゆっくりと深く呼吸をした。