その翌週、いつものように病室に行くと綺麗な笑顔と一緒に、ヴァイオリンが目に入った。

「いらっしゃい、颯太」
「こんにちは、って、あーヴァイオリン!」
「うん、久しぶりに弾こうと思って。屋上行こ?」

足取り軽く、屋上へ。
ドアを開けると風の荒いそこは少し寒く、俺にとってはちょうど良く。

「凜、寒くない?大丈夫?」
「何?弾くよー?」

少し前を歩く凜は風で上手く聞こえないのか、楽しそうに振り返ってヴァイオリンを首元に当てる。

途端、俺の周りの風の間を縫って、凜の音が耳に届いた、気がした。