そうしてまた暫くが過ぎた頃だった。
凜の病室のドアを開けると、凜はちらりと俺を見て、いらっしゃいとあやふやな笑顔を作った。

「…どうかした?」

不思議そうな顔をした凜に元気ないから、と言うとあぁ、と呟いた。

「ドラマ見てたら悲しくなっちゃって」

困ったように口端を上げて、目の下を軽く掻いた。

「…どんな?」
「よくある話。病気の女とその人を支える男の話。女は以前男と見た綺麗な景色を見たいんだけど、病気が悪くなって外に出られない」

想いは遂げられず彼女は死んだのと、凜は壁の一点を見ながら珍しく長く喋った。

「悲しくなっちゃって」

繰り返して、泣いたのか赤い目を伏せて軽く鼻を啜った。

「ねぇ、颯太。私たちみたいじゃない?」
「え」
「きっと自己投影したから、こんなに悲しい」

凜の視線は揺らぐ事無く、まだ壁を見つめていた。