兄貴の言った言葉に何の解決法も得ないまま、俺は病院に通い続けた。

「颯太、いらっしゃい」

安心したような、満足したようなこの笑顔を見に。
いつのまにか根元が黒くなった金髪。
痩けた頬。
病室の隅に置かれたヴァイオリンケースは開かれる事なく、あの日弓を落とした右手は動く事なく。

それでもくるくると変わる表情はそのままに、凜は俺の目にとても綺麗に見えた。

凜は俺をどう思ってる?

心の隅で湧いた疑問は声に出さずに、すぐに消した。
だって俺も、分からない。