ドアが閉まって、俺はまたギターを手に取った。
目が痛くて、涙が出そうだった。
さっきのタバコのせいだ、と軽く頭を振って鼻を啜って大きく息を吐いた。

ポロンポロンと適当に音を出しながら、この間凜の弾いてくれた曲のメロディを思い出そうとした。
でも、うまく思い出せなくて、代わりに兄貴の言った言葉が頭を占める。

好きなのか、その子。

兄貴の手の感触はわずかに残っていて、触れたらまだ少し温かかった。

凜に渡されたりんごの、移った体温に似ていた。