「いつ死んでもいいらしいよ私、って、ねぇ颯太聞いてる〜?さっきからぁ」

急におどけた口調になったから驚いて顔を上げると、目元が少し赤くなった凜はやっぱり微笑んだ。

「…うん、聞いてる」
「そっか」

続けてリンゴ食べる?とシーツを握った左手を離して指さす、その先にあるリンゴを取って、貸してと言われるままに渡す。

「…私ね、上手なのよ料理。特に和食得意なんだけどねー?」

既に何度も聞いた肉じゃがや味噌汁の話を繰り返して、包丁を握ってするすると皮をむいていく。
時々ぶるりと震える右手が不安だったから、代わろうと手を伸ばすと、ちろりと見てふいと目を逸らした。

「これくらいできるもん」
「…凜」
「これくらいできたもん」

悔しそうに唇を結んで、目を逸らしたままリンゴを渡した。
体温で生暖かくなったそれは、俺が不器用ながらも丁寧に剥いて食べさせた。