病室に帰ると、凜は淡々と話し始めた。
先週、俺が帰ったすぐ後の検査で病気が思ったより進んでいると知らされたらしい。

「…前々からねー?右手が痺れるなぁって感覚はあったのよ。あぁ、病気が酷くなってるなって。でも実際、実感みたいなのは無くてね?…無かったんだけどね」

自分に言い聞かせるようにしながら右手を見る。

「…本当に力入らなかった、病気なんだなって」

ベッドに上半身を起こして話す凜の顔がまともに見れなくて、左手がシーツを握るのを見ていた。

「…本当にヴァイオリン弾けなくなったんだ、私」

泣いてはいないんだろう、目を合わせたら深く笑うんだろう。
声は震えているくせに。