「俺は“ナカノ マサト”っていいます」



俺は傍にあった鞄から手帳とボールペンを出した。


手帳を広げてテーブルに置いた。



「漢字はこう書くんだ」



俺はボールペンで手帳に“中野 雅斗”と書いた。


手帳に視線を落とす彼女。



「年齢は25歳。仕事は高校の養護教諭してる。世間で言う保健室の先生ってやつ。今は彼女いなくて、家と職場の往復だけで、つまらない毎日を送ってる。趣味は何だろう?ドライブと釣りかなぁ?でも休みの日は、だいたい昼まで寝てて、起きて家のことをしてたら夕方になってて、それだけで休みが終わっちゃう感じかな」



そこまで言って彼女を見た。


手帳に書かれている俺の名前をジッと見ている。



「キミの名前も教えて?」



俺はそう言って、彼女にボールペンを差し出した。


何も言葉を発しない彼女。


でも紙に名前を書くことくらいは出来るだろうと思って、ボールペンを差し出したけど……。


だけど彼女は、首を横に振った。