コンビニで買ってきたカップ麺にケルトで沸かしたお湯を入れていく。
フタの上に割り箸を置いて、冷蔵庫からペットボトルのお茶を出して、それを持って部屋に戻った。
3分経たないうちにカップ麺のフタを開け、箸で掻き混ぜながら食べ始める。
狭い部屋の中にカップ麺特有の匂いが充満していた。
麺を啜りながら時々、彼女の方をチラッと見る。
別に物欲しそうに、こちらを見ているわけじゃなく、真っ直ぐ前を見ているままだった。
麺を急いで掻き込む。
5分もかからず麺を食べ終えた。
口の中の油っこさをお茶で流していく。
半分くらい飲み干したペットボトルをテーブルに置いて彼女の方を見た。
「そう言えばさぁ……。俺達、自己紹介がまだだったね」
俺がそう言うと、彼女は視線をゆっくり俺に向けた。
俺は彼女の名前も年齢も何も知らない。
ただ、彼女の名前を知りたいと思っただけで、感情を表さない彼女に何があったのか、そんなことを知りたいわけじゃなかった。