風呂から出ると、彼女は元の位置に座って真っ直ぐ前を見ていた。
俺は濡れた髪をタオルでガシガシ拭きながら自分が座っていたとこに座った。
「何か飲む?」
そう聞いても無言で首を横に振る彼女。
「そっか……。腹減ってない?何か食べる?」
彼女のことがあって、まだ晩ご飯を食べてなかった。
彼女が飯を食っているのか食ってないのかわからない。
でも彼女は、その問い掛けにも首を横に振った。
「遠慮しなくていいんだよ?……って言っても食べるものはカップ麺くらいしかないけど」
俺はそう言ってクスッと笑って見せたけど、相変わらず彼女は無表情のまま真っ直ぐ前を見ているだけ。
自分だけ笑ったことが急に恥ずかしくなって、俺は立ち上がるとカップ麺を用意するためにキッチンへ行った。