無表情で真っ直ぐ前を見つめる彼女の前にココアのはいったマグカップを置いた。
「お風呂、もう少しで沸くから、これでも飲んで待っててね」
そう言って、コーヒーのはいった自分のマグカップを持って一口飲んだ。
マグカップに口をつけたまま目を彼女の方に向ける。
相変わらず真っ直ぐ前を向いたままでココアを飲もうとしない彼女。
もしかして甘いもの嫌いだったのか?
口をつけていたマグカップをテーブルに置いた。
「ココア、嫌いだった?」
真っ直ぐ前を向いていた彼女は、顔をゆっくりと俺の方に向けた。
吸い込まれそうな大きな瞳。
瞬きすると長い睫毛が上下する。
少し首を傾けて俺を見る彼女。
「もし嫌いじゃなかったら飲んで?少しは体が温まると思うから」
彼女はココアのはいったマグカップに目線を写し、首を左右に振った。
その時、風呂のお湯が溜まったことを教える音楽が聴こえてきた。