この日、平田はそんなリコを見かね、村井と向き合わせることを決意した
夜、静まった医局
「村井君、少し時間いいかな?」
「はい」
平田が村井に業務以外のことで話しかけるのはリコが入院した日以来
平田の意味深な呼びかけに悪い胸騒ぎを感じつつ、医局奥の会議室に入る平田の後ろに着いていく
「今日も夜勤?」
「いえ・・・」
そぉ村井はリコが入院してから毎日、夜勤でもないのに医局に詰めっぱなしだ
「少しは身体休めないとだよ」
「・・・」
もっともな言葉に何も返せない
「恵理子ちゃんのこと気になる?」
「はい・・・」
「今ぐらい気に掛けてあげていれば、あそこまで酷くならずに済んだだろうね」
「・・・」
「反省してる?」
「はい」
村井の返事を冷静に聞きながら平田は背もたれに身体を預け、天井を見上げて話し始めた
「恵理子ちゃんねズット冴えない顔してる 回診に行くと外ばかり見て体調以外のことは何を聞いてもダンマリだ」
「体調は?」
「今のところまぁまぁかな 回復には向かってるけどイマイチ・・・未来が見えなくなってるのかな・・・元気になろうとする気持ちがないのかな・・・」
「僕に出来ることは・・・」
「3日間見守ってみたけど心のケアは僕じゃどぉしようもないみたいだ 村井君ならできるかな?」
「させてください お願いします もう一度チャンスを下さい」
翌朝、村井は白衣を着ずにリコの部屋へ行った
平田が言ったとおり、ノックしても返事は無い
ドアを開けると窓辺の椅子に座り遠くを見つめるリコの横顔が見える
部屋に入りドアを閉めリコを見つめる
その視線に気づいたかのように振り返ったリコは、いつもそこにいるはずの姿が平田ではなく村井であることに驚く
「久しぶり リコ」
「・・・」
無言で村井を見つめ返すリコに、静かに近づこうとすれば、リコは目線を逸らした
「俺のこと嫌いになった?」
リコの自分を拒否するような行動に、村井はリコに問いかけた
リコは目線を逸らしたまま何も言わず小さく首を横に振った
「隣座ってもいい??」
今度は小さく首を縦に振るリコ
村井はリコの横に座ると行儀よく膝の上に置かれたリコの手を握った
「ごめんな 苦しめて・・・」
下を向いたリコの顔を覗きこむようにして話し掛けると、リコは村井の胸に顔を埋め号泣した
いつもなら発作を恐れ、静かに涙を流すリコが初めて嗚咽をもらして号泣した
暫くして泣き止んだリコは、何も聞かず静かに自分を抱き寄せてくれるムラに、一人抱えていた発した言葉の後悔と、小柳とあったことを話した
バーベーキューに行ったときのこと、遊園地に行ったこと、罰ゲームのこと・・・
そしてムラを想う気持ち・・・
村井は少し興奮したが、リコが自分を想う気持ちを確信した
「リコもぉいいよ リコの気持ち分かったから 俺もリコを苦しめてた・・・だから・・・お互い様にしよ」
「・・・」
「リコ、顔上げて」
「・・・」
リコは涙でグッショリした顔を恥かしくて上げれない
下から覗き込むように見ればリコは袖口で顔を覆い隠そうとする
抱き寄せた肩を掴んでそのまま仰向けに椅子に倒せばリコは覆いかぶさるムラを見つめる
「恥かしい?」
「・・・うん」
「大好きだよ」
ムラはそぉ言うと、何か言おうと口を開いたリコの口を塞いだ
「アッ・・・クハッ・・・チュッ・・・チュパッ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・」
「リコ好きだよ・・・」
「私も・・・アッ・・・」
ムラの言葉に答えようと口を開いたリコにムラが挿し込む
「アッ・・・ん~~・・・クハッ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・」
呼吸が苦しくならないように配慮するが、高ぶる心は止むことを知らない
理性に危険を感じた村井はリコを抱きしめると耳元で呟いた
「続きはまた元気になってから お楽しみな」
名残惜しむようにリコを抱きしめたまま離そうとしない村井に、リコは回していた腕に力をこめギュッとした
夜、村井が医局で平田に説教されたことは言うまでも無い
そして念のため入院したリコを夜這いに行かないよう重々警告された
そして一週間後、リコは無事に退院した
~END~