「分かりました」
ファイルを抱え直して部長に言う。
「今日中に確認しておきます」
「あぁ」
平常心を取り戻したあたしに、彼はさっきまでとは打って変わった、いつもの無表情で応える。
仕事の顔だ。
そう分かったから、なおさら変な想像をしてしまった自分が恥ずかしい。
この場にいることが気まずくて、頭をひとつ下げる。
「失礼します」
そのまま背中を向ける。
午後はこの資料の確認をしなくては、と考える。
残業になったら……いや、月曜日から残業なんてあまりしたくはない。
さっさと終わらせようと足を前に出す。
そこに響いてきた、彼の声。