あれこれ考えて彼の問いに応えないでいると、その端正な眉がぎゅっと寄せられた。
「笹本、聞いているのか」
「えっ、あ、はい……」
斜め下から上目遣いで睨まれる。
男の上目遣いって……。
顔がほてっていくのは、部長を前にしたら誰でもそうなるだろう。
はっきり言って、そこら辺の女よりずっと……魅惑的だ。
「はぁ……」
「上司を前にしてため息とは、いい度胸だな」
思わずこぼれたそれに、桐生部長の瞳がきらりと光って、唇がつりあげられた。
一瞬にして、高まる心臓。
すいません、という声さえ出ない。
気づいてみたら会議室に入ってから、あたしはまともに口を開いていない。
上司だけど、上司ではない雰囲気を持つ彼に、さっきから惑わされっぱなし。
……だって、彼の動作があまりにもいつもと違っていて、新鮮だったから。