「もう!説教されにいくわけじゃないんだから、さっさと資料貰ってきなさいよ」
返事をしたものの中々立ち上がらないあたしを見て、ついに梨華が痺れを切らした。
これは、ちょっと怒ってるな。
梨華に怒られたくない、と思い、ため息をついて立ち上がった。
「いってきます…」
「やっと行くか。お昼は先に食べてるからね」
「うん」
のろのろと歩き出す後ろから、あたしの心情なんて微塵も知らない梨華の声が飛ぶ。
5階にある会議室に近づくにつれて、心臓の高鳴りは大きくなる。
行きたくない。
だけど、行ってみたい。
2つの相反する思いが交差して、余計に足取りは遅くなった。
そして無情にも、歩いているのだから必ず着いてしまう会議室。
ドアの前にたって、その扉を見つめる。
なんだか、恐ろしく冷たいもののように思えた。