ただ単に、上司として部下にやってほしい仕事があったのか。
それとも他に違う目的が……。
「……って、ないない!」
金曜日の夜の出来事が頭を掠めて、慌てて首を降る。
あれは……部長が冗談半分でやったことだ。
ちょっとからかわれただけ。
そう結論づけて割り切ったつもりでいたこの土日。
だけど、部長の今の言葉のせいで、そんなことあるはずないと分かっているのに違うことを考えてしまう。
……そう、部長が言ってた『上司』と『部下』の関係を。
結局そのあとはほとんど仕事に手をつけられず、あっという間にお昼の時間になってしまった。
「雨衣、そろそろ行った方がいいんじゃない?」
「………………うん」
時計の針がさすのは12時30分。
行く決心がなかなかつかないでいたけど、さすがに30分も待たせるのはまずい。
部長は12時になると同時に、フロアを出ていってしまったのだから。