「そういえば、お前小さい頃はナキムシだったな」
どこか遠い目をしながら、でも俺をからかうような目つきをする真。
「そうだったけ?」
と何気ない感じでスルーした。コイツは人に幼い頃のエピソードを赤裸々に喋って、本人に恥をかかせるのが大好きという悪趣味の持ち主。
ここでのると、偉いことになる。
しかし、俺は甘かったらしい。
「そーだよ、すんげーナキムシだった。少しすりむいただけでも泣きそうになるし。俺がバカとかいうと、バカでごめんなさいーって言って号泣しだしてさー。
母ちゃんはお前が女の子みたいな顔してらー、あんな可愛い子泣かしたらダメよって、すんげー怒られて」
ケラケラ腹を抱えて笑い出す真に、俺はムッとする。
「真だって、すごいガキ大将でさ。いっつも学校で悪さばっかして若い女の先生を逆に泣かしたこともあったよ。ま、俺も泣かされたけどー。ホント、俺たち正反対だったな」
酒が入ってるせいか、いつにもまして俺の舌は饒舌だった。ようするに、昔の引っ込み思案で口数が少ないのも、成長しても変わらないっていうことでもある。