私も、皆につられて教室に入った。

太陽「美月!!!」

と、言って、大きく手を振る渡辺くん。

手を振り返すと、誰かから痛い視線を感じる。

視線のほうを見ると、耀平だった。

何だかんだいったって、さっきのって、心配してくれてたんだよね。

なのに、あんなにカッとなって、私最低だ。

耀平、ゴメンね。

再び、渡辺くんの方に足を向けた。

ゆっくり、渡辺くんに近づいていく。

美月「・・・ねぇ、渡辺くん??」

太陽「ん??」

聞かなきゃ。

美月「・・・渡辺くんってさぁ・・・何かしたの??」

クラスの皆までもが、静かになってしまった。

太陽「何で??」

今まで、優しかった、渡辺くんの顔が『不良』の顔に戻り、低い声で聞いてきた。

美月「なんかみんな、怯えてるっぽいよ??」

太陽「お前ら俺に、怯えてんのかよっ!!!」

鋭いけれど大きな目が、一人ひとりを顔を映していく。

太陽「どうなんだよっ??あ゛っ??」

しばらく沈黙が続いた。

でも、この沈黙を破ったのは、耀平だった。

耀平「完全にお前、浮いてるだろ。」

太陽「あ゛??もういっぺん言ってみろや。」

耀平「浮・い・て・る・だ・ろ・お・ま・え。」

耀平がそう言った瞬間、渡辺くんが、耀平の胸倉を掴んだ。

太陽「テメェ。ナメてんのか??」

耀平「もう、美月に関わらないでくれるか??」

太陽「テメェには、関係ねぇだろ??」

耀平「お前は、美月とは、つり合わない。」

渡辺くんが、耀平を殴ろうとしてる。

美月「ヤメてっ!!!!」

そう、大声で叫んだ。

太陽「・・・。」

渡辺くんは、耀平の胸倉を掴んでいる手を離した。

美月「こんなこと、聞いた私が悪いんだよ。ゴメン。」

渡辺くんは、無言で教室を出て行った。

美月「耀平・・・大丈夫??」

耀平「だから、言っただろ??アイツには、関わんなって。」

美月「・・・うん。ごめん。」

私の目には、大粒の涙が零れ落ちていた。

美月「ごめん。耀平。」

キーンコーンカーンコーン。

あれから、渡辺くんが教室に帰ってくることはなかった。