「すいません。サン・ジェルマンをひとつお願いします」俺は、続けざまに注文を繰り返す。


「かしこまりました」相変わらずバーテンダーは無愛想だった。


 サン・ジェルマンを飲みながら、また由美の事を考えた。


 何故、彼女に突然別れを告げられてしまったのだろうか。

 俺自身は幸せだったが、彼女はそう感じてくれなかったのだろうか?


 今まで一緒に過ごしてきた様々な思い出が記憶の底から浮上する。