奈央は下を向いた。何だか急に惨めになったのだ。ぽろぽろと涙がこぼれた。



かおりは黙って奈央を見ていたが、やがて、一台のバイクにまたがった、痩せた少年に声をかけた。



「ヤスシぃ、あんたタンデムしてやんなよ」



「いいぜ、カオリ」



フルカウリングからリアフェンダーまで派手な炎のエンブレムがペイントされているバイクにまたがっていた少年に、かおりは言った。



やすしと呼ばれた少年は、被っていたヘルメットを外すと、奈央に放り投げた。



奈央はあわててなんとか抱きかかえるようにキャッチすると、見よう見まねで頭にのせた。が、うまく被れない。



かおりはバイクから降りると、つかつかと奈央に歩み寄り、ヘルメットの両サイドのベルト部分をぐっと左右に引っ張ってスッポリと被せた。



「よーし、いいじゃん」



かおりはぽんぽんとヘルメットの頭をたたくと、再び先頭バイクの後ろにまたがった。



奈央がやすしの腹部に腕を回すのを見届けると、かおりを乗せた先頭のライダーが大きく右手を上げた。



一気に爆音がとどろき、十数台のバイクは光の帯を従えて闇に流れていった。