「『とっても泳ぐのが速くて、一度追いかけられたらどんなに一生懸命逃げても
絶対つかまってしまうのよ。』って。
でも、泳ぐのは僕の方が速いと思うよ!つかまりっこないさ。
それに、もし捕まっちゃったっとしても、勇敢な僕がコテンパンに…」
やっつけてやる、と言おうとしましたが、お母さんがさっきよりも怖い顔をして
男の子を見ていたので、口をつぐみました。

「いい?お母さんから離れて、一人で遠くにはあまり行かないこと。
もし離れちゃっても、必ずお母さんの声の聞こえるところにいてちょうだい。わかった?」
お母さんは、男の子に向かってしっかりと言いました。
男の子も、今度はさすがに口答えはできず、
くるりと尾ヒレを翻して仰向けから体を戻しながら、
「はぁい」と小さくつぶやくだけでした。