「もう、みんなの迷惑になるようなことはしちゃいけませんって、
何度も言ってるでしょう?それから…」

と、お母さんは少し怖い顔になって言いました。
「仲間のみんなと離れて泳いじゃいけませんって、何度言ったらわかるの?」
お母さんのお小言は、毎日のことのようになっていました。
男の子は、そんなお母さんのお小言には動じません。
それどころか、「だって」と口答えを始めました。
「僕はもう立派に泳げるし、他の子達と違って勇敢なんだ。
海の中ならどこだって一人で行けるよ」
そう言うなり、男の子はくるりと尾ヒレを回し、仰向けになって
お母さんに白くてツヤツヤのお腹を見せました。

確かに、男の子は群れの中の同じ時季に生まれたどの子よりも活発で、
泳ぎも上手だし、好奇心は余りあるほどありました。