チャプン

可愛らしい音を立てて、イルカの男の子の体が宙に飛び出しました。

一人前というにはまだ幼い流線型の体を流れ落ちる水も、
そこから飛び散る水滴も、
朝日のまぶしい光を受けてキラキラと輝きます。

ザプ…ン

海面に、その身を打ちつけるようにして体を水中に戻すと、
イルカの男の子は軽やかなスピードで海の中を泳いでいきました。

朝日の強く黄色い光が海中に差しこみ、
くるんくるんと遊ぶように泳ぐ小魚の群れの、それぞれの体のウロコに反射します。

イルカの男の子の目には、この新しい朝の光によって、
全てが初めて見るもののように新鮮に映りました。
そして、イルカの男の子は今、自分が群れを離れて
独りで海を泳いでいるのだということを感じているのでした。
お小言を言うお母さんも、仲間のイルカもまわりにはいません。

男の子は、仲間の誰の目を気にすることもなく自由に泳いでいると思うと、
また胸がワクワクしてくるのでした。
『大きなサメ』の話だって怖くありません。
だって、もし出会ってしまっても、勇敢な自分がコテンパンにやっつけてしまうからです。
そして、海に落ちたお星様を探し出して、お母さん達に見せる。

「勇敢なイルカの証にするんだ」

僕はきっと、海の中の英雄になれるかもしれないぞ、とイルカの男の子は思いました。